2月27日からベトナムのハノイで開催されていた米朝首脳会談で、非核化と経済制裁解除を巡るトランプ大統領と金委員長の駆け引きの末、合意に達せず決裂しました。
今回驚きだったのが通常、国のトップ同士が重要な事案を巡り会談を行う際は事務方が細部まで詰め、お膳立てをした上でその”実”を取る演出を行う場としてセッティングされるはずなのです。しかし、今回は完全に順序が逆転しています。というか先走ってしまった。
巷間では、ロシア疑惑や国境の壁予算問題で失点が続いていて、挽回のチャンスを狙う(または疑惑から注目を逸らす)トランプ大統領の足元を見て、北朝鮮側が”経済制裁の全面解除”という、あまりにも高いボールを投げてきたためとも言われています。
折しもこの期間中、トランプ大統領のロシア疑惑や不倫問題というスキャンダルをめぐる公聴会がアメリカで開かれていて、仮にトランプ大統領が功をあせるあまり弱腰の合意を行うと”交渉失敗”のレッテルを張られ、帰国後の立場が更に悪化する恐れがあるため、安易に妥協できなかったという側面もあります。
お互いの国のトップが「相手は譲歩するだろう」と楽観視しすぎていたというのが、結果から見る実情ですが、どちらも甘かったというしかありません。
北朝鮮は簡単に核を廃棄しない
当初、北朝鮮はアメリカへの全面経済解除の見返りとして、寧辺の各施設廃棄を差し出すつもりでした。しかし、アメリカとしては絶対ラインであるICBM弾道ミサイルの放棄の約束が得られなかったことから決裂しました。
そもそも北朝鮮は簡単には核を放棄することはありません。なぜならどんな経済援助の約束を取り付けようとも、核を放棄すればどこからも注意を払われないただの3流国に成り下がるのが分かっているからです。
”ただの3流国”に成り下がれば、経済援助とともに情報も国内に侵入し、下手をすれば”アラブの春”が同国で再現される可能性も高まります。そうすると金王政が打倒され、そこまでいかなくても極端な経済格差のために南主導の南北統一に傾けば、北が埋没してしまう可能性が極めて高くなります。
徳川家康は大阪城を責める際、外堀を埋めさせた後は約束を反故にして内堀を埋め、丸裸となった大阪城を攻め、豊臣家を滅ぼしました。
北の核への執着はまさに生存本能に基づく最適戦略なのです。
今後の北の動きに注目したい
両国が合意しなかったことにより、28日の韓国株式市場では、韓国総合株価指数が前日比39.35ポイント(1.76%)安となりました。
トランプ大統領は会見を前倒しし、早々と帰国しましたが、金委員長も予定を切り上げ、2日に帰国しました。途中、北京によって習国家主席と会談するか注目されているようです。習国家主席はまさに今、米中通商協議の渦中にいますので、トランプ大統領の発言・言動の情報を得たいはずです。
株式市場では米中通商協議の行方について楽観視されているようですが、この米朝首脳会談の結果を受け、習国家主席が「トランプにはブラフは通じない」と考えるのか、「トランプは尻に火がついている」と考えるのか、今後の同国の戦略に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
一方、金委員長は帰国後、核実験やミサイル実験を行うとなると、第3回の会談にも暗雲が立ち込めてきますので、交渉はかなり停滞することになります。
これからの北朝鮮、そして中国の動きに注目していきたいと思います。
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