世の中にある不思議な出来事、超常現象をみなさんは信じるでしょうか。
私の兄が結構信じる方で、昔は”ムー”というその系の雑誌を定期購読していたので、隠れて読んでいました。
ショックだったのがネッシーがフェイクだったこと。
確かにあんなイギリスの湖(ネス湖)にデカい恐竜みたいのものがジュラ紀から人の目に触れずに生きて来れるはずがないことは、いい大人ならすぐに分かりますよね。
UFOは文字通り”未確認飛行物体”ということであれば存在はしますが、あれに宇宙人が乗っているというのはありえないでしょう。
ということで、大人になるにつれ理性で物事を考えるようになった私は、そんな話をリアリティを持って聞くことは全くなくなりました。
ただ、映画や小説ではその設定を飲み込んだ上で楽しむことは大好きです。
モンスターや宇宙人、未来や過去にいく話とかですね。
さて、そんな私が面白さのあまり、膨大なページを一気に読み終えたのがこの小説です。
これが極上の冒険エンターテイメントだ!
この小説は大きく3つに分かれています。
まず第1章 主役である”大生部(おおうぶ)教授”は昔家族でアフリカに行った際、気球から娘が落ちて死んでしまい、そして神経を病んだ奥さんが新興宗教にのめり込んでしまいます。
その新興宗教から奥さんを救出するため、教授と少林寺拳法の使い手である助手の道満、そして「全ての超能力はトリックで再現することが出来る」と豪語するミスターミラクルが宗教本部に乗り込み、トリックを暴くというもの。
第2章 民族学者である大生部教授一行がテレビのロケでアフリカの呪術師の村を訪れます。
このアフリカではアルビノでケニア最強の呪術師バキリと、呪術の力を増幅させる呪具である”キジーツ”と遭遇。
教授達は「夜になると歌って踊る」と噂されるバキリの持つ最強のキジーツ、”バナナのキジーツ”を奪い逃走することに成功。
第3章 ”バナナのキジーツ”を奪い返しに日本に来たバキリ。
番組関係者の間に起こる数々の奇怪な事件。
そして番組内でのバキリとの対決と、テレビ局の屋上での決戦へ。
第1章で超常現象を全て否定しながら、それ以降の2章では呪術という怪しげな空気が漂い始め、第3章の大乱闘へと発展していきます。
中島らもの作品は他も面白いけど、ガダラの豚は最強だ
この小説の作者である中島らも氏は、多くの小説やエッセイを書いていて、私が大学を休学して南米に行くとき、”変!!”というエッセイ1冊だけを持って行き、他に読める日本語もなかったので、数十回読んだことがあります。
”変!!”もとても面白かったですが、をやはり”ガダラの豚”は異次元の面白さです。
中島らもはアル中でうつ病でしたが、とても多彩な人間で、コピーライター、放送作家、ミュージシャンなどの多くの顔を持っていました。
最後は階段から落ちて頭部を強打し、52歳で亡くなっています。
もっと彼の書いた小説を読んでみたかったなあ。
”ガダラの豚”には推理、冒険、超常現象、民族・風土、裏切り、死闘など、およそ思いつく限りのエンターテイメントがチャンプルーでてんこ盛りに詰め込まれています。
小説の中では独特の”中島らも節”も炸裂しており、「人は自分の魂をちげって投げるんだ。それが言葉だ」というような、心に強く残るようなフレーズもポンポン飛び出します。
最強の呪術師バキリと大生部教授軍団との対決、バナナのキジーツの正体を直接確かめてみてはいかがでしょうか。
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