遡ること数年前

あなた、生まれてくる子どもの名前、何にしようかしら

そうだなあ。男の子なら翔、女の子なら咲子、ってのはどうだい?

いい名前だけど、どうしてその名前なの?

そりゃあ最強にして最高の漫画、“漂流教室”の主人公達の名前だからじゃないか

却下

ぬわにっ!あの楳図かずお先生の大傑作であらせられる“漂流教室”だと知ってのことか!

うめず・・・、却下

うぐぐ・・・、だけど、楳図大せんせ・・

却下1億乗

うぐぐ・・・、グワシッ!
鬼才が描く壮大なスペクタル巨編
本当に簡単に、五七五くらいの勢いで説明すると、小学校の校舎の敷地ごと、砂漠化した未来に飛ばされた小学生達が現代に戻ろうとするストーリーで、そこで起こる数々の試練とその中で生き抜こうとするサバイバル、友人達との対立と友情が描かれていて、その中心を“親子愛”が貫いています。
少しだけネタバレすると、ある“装置”を介して、主人公の高松翔は過去にいる母親と会話ができるようになります。そして未来で襲いかかってくる凄まじい試練を自分たちの力で、時には過去にいる母親の援護を受けながら乗り越えていきます。
翔の声を聞き取ることができるのは母親だけであり、他の人達にはその声は聞こえません。息子の声を信じて東奔西走し、奇妙な行動をとる母親は、事情を知らない周りの人々から“子どもを亡くした母親のノイローゼ”の扱いを受けます。しかしそれでも母親は息子のために困難なミッションをやりとげます。例えば、野球のスーパースターの死体の中にストレプトマイシンを埋め込んだりという無茶なミッションなど。
飢えで苦しむ小学生達に怪虫(見たこともない虫のような怪物)や未来人、集団自殺、ペスト、盲腸、親友との対立による争いなど、絶望的な困難が次から次に襲いかかります。
どのエピソードもとにかく強烈で、その対処法もすごい。怪虫との戦いなんかメチャクチャですよ。「イスになれー!!!」ですよ。
その度に行動力と知恵と母親の愛で突破していく主人公の翔。
そして全編を通じて発射される、奇才、楳図かずおが繰り出す強烈なセリフの数々。最終ステージでは学校が未来に飛ばされた原因とその犯人が判明。IQ230の天才児、我猛君の仮説によって、果たして子ども達は現代に帰れるのか!
そして最初はわがままばかり言っていて、最後は誰よりも成長したゆうちゃん(3歳児)の運命は!と一人で盛り上がってしまいました。
楳図かずおはもの凄い漫画家だ
“漂流教室”はかつて少年サンデーで楳図かずおが連載していた漫画で、エキセントリックな設定に焦点が当たりがちですが、このマンガの本質は母親の愛を楳図流に強烈に描いたものです。
単行本で全11巻というボリュームで、私は小学生の時に塾に通う途中の書店で2巻から立ち読みし、担任が狂ってしまい、主人公達を殺そうとする内容に衝撃を受け、毎週1冊ずつ購入し全巻揃えるという空中殺法を編みだし、帰ってからワクワクしながら何度も読み返していました。今となってはいい思い出です。
楳図かずおは「まことちゃん」や「おろち」などが有名ですが、他にも素晴らしい傑作を書いていて、「私は真吾」や「神の左手悪魔の右手」、「14歳」などもかなりオススメです。
さて、漂流教室のことを書き出したら全バレしてしまいそうなので、この辺でやめておきます。
では最後に、数ある名言の中から二つつだけ胸アツのセリフを紹介します。二つなのは絞りきれないからです。
一つ目はご存じ池垣君が大怪虫からの襲撃を校舎の二階で迎え撃つ時に、仲間に叫んだ最後のセリフです。
「いいか、ぼくたちわんぱくグループで絶対にあいつをやっつけるんだぞ!! 勉強はだめだけど、やるぞ!! 絶対に三階にやらすなっ!! 武器を用意しろーっ!!」
二つ目はミニ怪虫の群れに西さんが襲われそうになった時、仲田くんが繰り出した渾身のセリフです。
「虫の群れ、消えろっ!! この世界も消えろっ!! もとの世界にもどれーっ!! みんな見ていてくれっ!! ぼく、ちゃんと死ぬぞ!! 西さん、ぼくのこと忘れないでねっ!! えいっ!!」
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