イギリスのEUからの合意無し離脱が現実味を帯びてきました。
議会で合意した離脱案について、トゥスクEU大統領は再交渉のテーブルにつくことすら応じる構えを見せておらず、あろうことか、何の実施方法も考えずにブレグジットを推進した人々に対し「地獄に特等席が用意されている」と、激しい言葉で非難しています。
しかし、地獄に特等席が用意って、トサカに来ているのは分かりますが、トランプ大統領でも言わないんじゃないでしょうか。EU官僚ホントに大丈夫?
さて、外交というのは基本的に自国が有利なように攻めるのが基本なので、そのための手段としてのハッタリから、戦争という最悪の手段まで幅広く行われるのが常です。
EU側も、イギリスが有利なように離脱させれば他の加盟国に示しがつかず、「加盟してなくても甘い汁が吸える」となれば、雪崩を打って離脱し、EUの存続自体が危うくなりますので、毅然とした交渉を行うのは当然です。
今回のブレグジットのケースに付いて言えば、アイルランドと英国領北アイルランドの国境措置をどうするかという、いわゆる“バックストップ条項”が最大の焦点となっています。
こちらは国境を物理的に設けるか(奇しくもアメリカと同じ問題)、イギリスが関税同盟に残ってなお英国民の理解を得られるような妙案を思いつくかどちらかしかありません。
このバックストップ条項については、時間をかければ誰かがウルトラCの解決方法を示してくれるとでも英国議会は思っているんでしょうか。私には単なる先延ばしの解決不能な問題に思えてなりません。
ブーメランを食らう悪意の無い人々
先日、日産が工場を構えているサンダーランドで、「エクストレイル」の次期モデルの生産計画を白紙に戻すというニュースがありました。
工場撤退といったハードな問題には至っていませんが、このニュースはサンダーランドでは悲観的にとらえられていて、実際に合意無き離脱が起こった場合、工場自体の存続を心配する労働者も多数いるとのことです。
ところで、当地では住民のほとんどが日産の工場で働いているか、もしくは働いている人を知っているという、日産の自動車工場が街の産業の大きな柱となっています。
このサンダーランド、ブレグジットの際の国民投票ではおよそ60%が離脱賛成派だったと言われています。当時は労働組合が運動を展開してブレグジットを推進したようですが、ニュースインタビューを聞く限りでは、賛成票を投じた末端の労働者達は自分達の行動がどういう結果を招くかイマイチよく分かっていなかったようでした。
そもそもブレグジットに至った背景は、移民に働き口を奪われるという危機感が一つの要因で、これは中間層以下の労働者の心情に強力に訴えるため、たやすく支持を得ることができただろうことは想像に難くありません。
ただそれは物事の一面的な部分の話であり、英国民が享受していたこれまで当たり前だと思っていた恩恵に思いは至りませんでした。
国民投票のように国民に直接決定権を委ねると感情的な物事に左右されたり、パフォーマンスに優れたリーダーに扇動されたりする危うさがあります。
今回の一連の出来事により、サンダーランドの住民達には壮大なブーメランが戻ってきました。今後、このブーメランはサンダーランドのみならず、イギリス全土を蹂躙することになるでしょう。
合意無き離脱が現実味を帯びてきた
冒頭のトゥスクEU大統領の発言のように、EU側が強硬な態度を崩しません。
イギリス側も内部でまとまる気配は微塵もないですから、延期なしの3月29日の合意無き離脱が現実味を帯びてきました。
株式相場は合意無き離脱を少しずつ織り込んで来ているとはいえ、まさにその事が確実になった場合、全世界同時株安・円高と、それなりの衝撃が起こると思っています。日本も無傷ではいられない。
私個人としての対応は、イギリスのADR株であるナショナル・グリッド(NGG)を始めとした売却可能な株、ETFを売却してキャッシュで保有しておくことです(NGGを売るかはまだ迷い中)
現在、売却可能なETFとしてはVWOで、これはもう42ドルを回復したらどうせ売るつもりでしたので、タイミングが一致したと思えばいいかも。
逆に、売ろうと思っていた金鉱株、ハーモニー・ゴールド・マイニングとシバンエ・スティル・ウォーターをもう少し引っ張ろうかと少し欲が出てきました。
ということで、かなり悩む場面が刻々と迫ってきています。
コメント