権威への反逆  ー従順な羊は幸せになれるかー

投資全般
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私の米国株デビューは2010年で、最初はVTとVTI、EEM、EFAの4つのETFでした。

そこからVWO、VOOを追加、買い増しに伴い、経費率が高く、新興国のカバー率が低かったEEM、今後の成長に悲観的になったEFAを売却しました。

ETFへの投資はどのフィールドをカバーしたいか、そしてどれが経費率が安いかという、あまり複雑ではない選定プロセスとなるため、ほとんど考えないまま購入していました。

 

2017年から私のポートフォリオに大きな転換が起こります。

きっかけはよく覚えていませんが、今でも毎日見ているブログ村とブログランキングの米国株カテゴリーの影響で、米国個別株を組み入れ始めました。

これらのブログの上位に位置するカリスマブロガーの方々の洗練されたグラフやデータ、歴史からひもといた方針決定、そして「~するのが正解です」という断定的なセリフの数々。

バックテストでシミュレーションするとか何じゃらホイ。

今では個別株の方針は決まっているのでブレることはありませんが、それでもこの情報のシャワーは良くも悪くも投資家に影響を与え続けます。

 

影響力の武器

アメリカの社会心理学者、ロバート・B・チャルディーニは、相手を思い通りに誘導する手法をまとめた「影響力の武器」という本を執筆しました。

チャルディーニはその手法を6つにカテゴライズしました。そのうちの一つ「権威」です。

 

「権威」による影響力として、例えば人間は相手の肩書きや地位、服装、職業などによって、その人を盲目的に信用してしまうことがあるということです。

「影響力の武器」の中で取り上げられた例では、ある実験で、①病院に医者を名乗る人物が電話をかけ、②ある患者が治療している病気に対応するものではない薬を、③過剰な量投与するよう指示したところ、ほとんどの看護師がそれに従ったという結果が示されました。

権威の前では思考停止して、その指示に従うという信じられない実例です(実際の実験では、看護師が病室に向かう途中で止めたとのことです)

これは極端な例ですが、我々は、職業がお医者さんというだけで、その人物が品行方正で立派な人物だと思ったり、過去に甲子園に行ったことがある人なら、何事も一生懸命な人物だと思ってみたりと、そういう傾向は確かにあるでしょう。

大体においてその可能性は高いかもしれませんが、しかし、職業や実績がその人の人間性を保証する根拠は、実はどこにもありません。

医者や元甲子園球児だって深刻な犯罪を犯した人は何人もいます。

では、何故我々は「権威」の前で疑うことがなくなるのでしょうか。

 

それは「その方が楽だから」です。

その人物がどういう人間なのかをいちいち見極めてからしか付き合わないとなると、これはかなりの労力と時間がかかります。

例えば、病院で医者から勧められた薬を服用するにあたって、自分の症状には本当にこの薬が最適なのか、この医者はこの病気について専門性を有しているのか、そしてそもそも本当に風邪なのか?などなど、これらを全部調べてからでないと医者が信用できないのなら、毎回大きなコストを支払うことになります。

こんなことを続けていては日常生活は回りません。

だから我々は権威に対して「概ねこういう人だろう」という先入観を持つことで、スムーズに生活を回しているわけです。

 

投資の世界にあふれる権威

毎朝、ブックマークした経済サイトを流し読みしています。

よくもまあこんなにニュースが毎日あって、いろんな見解がでてくるなあと感心しますね。

 

例えば、あるアナリストなんかは長期では円は安くなると想定し、「ドル円は118円を突破する!」と言ってみたり、一方、他のアナリストは「ドル円は108円を試す」とか言ってみたり。

そういう記事にはまたもっともらしい根拠や過去のデータなんかもついているので、もうど素人丸出しの私なんかすぐに感化されてしまいます。

 

米中の貿易戦争で90日の協議期間が設定されたけど、そんな短い期間で知財をどうこうできる道筋は立つはずがない。

だから期限が来たら中国製品に高関税がかけられるのは間違いないのでリスクオフになる、そのため強烈な円高になるのか。

もう持ち株全部売り払って全部円転しなければっ!とか、ふむふむ、武田薬品のシャイアー買収でドル買いが起こって円安になるわけか。ならこのままホールドでいいか、とかね。

 

投資の権威がスベった話

○「なぜ投資のプロはサルに負けるのか」という本の中で、サルが投げたダーツで決めた投資信託とプロのファンドマネージャーが選んだ投資信託の成績を比べるという、ちょっと意地の悪い実験が紹介されています。

その結果は、みなさんの予想通りサルの勝ち。

プロのファンドマネージャーはその報酬分において、サルの成績に劣後しました。

 

○投資の神様、ウォーレン・バフェットはファンド・オブ・ヘッジファンズのプロテジェ・パートナーズ社とある賭けをしました。

賭けの内容は、S&P500インデックス・ファンドの10年間のパフォーマンスが、ヘッジファンドを上回ればバフェットの勝ちというものです。

その結果はもちろんバフェットの勝ち。

 

○バフェット、ソロスと並ぶ3大投資家の一人、ジム・ロジャーズは商品の時代が来るとずっと主張していましたが、例えば石油相場に強気の姿勢で臨んだりしましたが、株が2倍になる間、商品のリターンはほとんどありませんでした。

 

○3大投資家のもう一人、ジョージ・ソロスは、当時のトランプ候補が大統領に当選したことを受け株の空売りを仕掛けましたが、ご存じのように、米国株はそれ以来絶好調だったため、多大な損失を生みました。

 

このように、投資のプロと呼ばれる「権威」が実は虚構だったことが分かりますし、レジェンドと呼ばれる権威でも読みを外すことが分かります。

さらに、その中にはスポンサーの意向を反映させたり、売り買いに伴う手数料を目的に、バイアスのかかった「権威」の意見や企業のニュースも入り込むから、さらにやっかいです。

 

経済学者のバートン・マルキールは、その著書「ウォール街のランダムウォーカー」の中で、市場はランダム(規則性無く)ウォークすると結論づけています。

市場のモメンタム(方向性)は日々起こるミクロからマクロに至る事件と、将来予測、そして市場参加者の心理などなどの事象が絡み合う複雑な世界です。

後付けなら何とでも説明は付きますが、事前に市場の動きを読むことは難しいということですね。

 

色々書きましたが、すべての専門家や詳しい方々を否定するわけではありません。

一般の投資家の方々は、たくさんの「権威」の意見を取り入れ、自らの投資方針を組み立てる材料にしていると思いますが、このような複雑系の世界では、個々の「権威」の意見に動揺することなく、自らの投資方針を守ることが大切だと思います。

仮に予想が外れた場合でも、自分で納得できる投資をしたいですね。

 

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コメント

  1. deefe より:

    死ぬまで自分がだまされていることに気が付かないほど従順なら、逆に幸せなのかもしれない

    • よしお より:

      た、確かに(ゴクリ)
      映画「レナードの朝」や小説「アルジャーノンに花束を」でも、リアルな世界を知ったために起こった悲哀でしたからね。

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